福地 誠

定価: ¥ 1,000
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発売日: 2006-06
発売元: 洋泉社
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親の資力と子どもの教育
東京都内私立中高一貫校教諭時代の話である。一握りの国公立学校を除いて、私立学校はハイレベル・受験向き、公立学校はその受け皿というのが常識だった。近年、ようやく変化の兆しが見え始めている。田園調布、成城などの高級住宅地には高額所得層(上流階級)が居住する。そしてその鉄道沿線には、名門私立学園が存在する。彼らの子弟は乳幼児期から英才教育を受け、名門私立幼稚園に入る。あとはエスカレーター式に小・中・高・大と進学するか、東京大学を頂点とする名門大学に進学。大企業の一流大学の優先採用は変わらず、一流大学が受験生の狭き門であることは変わらない。卒業後は大企業に就職し人もうらやむ豊かな生活を送る、いわゆる「勝ち組」となる。こうして現在の上流階級(格差再生産のメカニズム)が形成された。愛知県には、昨年トヨタをはじめ初めとする中部財界3社が半分以上を負担して私立海陽中等教育学校が創立された。この学校は、貴族階級の子弟教育で有名なイギリス・イートン校をモデルにしている。学費は年間300万円(寮費も含む)。これでは少子化もやむを得まい。また、2011年4月には横浜市に慶応義塾の小中一貫校が創立される。日本の教育は、全体の底上げを目指すボトムアップ型から優秀な子を伸ばすプルトップ型へ舵が切られたと言えよう。親にとっては、子どもの養育と自分の老後の蓄えのどちらに投資するかの二者択一の時代だ。年金支給は不透明、親にとっては拷問以外の何物でもない。マイホームなど絶望的。絶望は「モラル崩壊」に向かい、治安はさらに悪化する。少子化による大学全入時代到来により、地方私立大学は定員割れ・座して死を待つ状態。多くの大学は志願倍率や入学者数などのデータを公表できないでいる。そんな大学に高い学費を支払い進学するよりも、専門学校で資格などを取得した方が合理的だ。子どもの進路選択の余地は限りなく狭くなる。階級・世襲制の壁が待ち構えている。日本での国会の二世議員などがいい例だ。日本滅亡のシナリオだ。公教育とは一線を画し「大学院修士課程修了(専修教諭)」で固めた私立小学校も存在する。信頼を失った公教育の再生のためにも、公立学校教員採用試験受験資格を「専修教諭」にレベルアップしたらどうか。真の学歴社会はこれから始まる。慶応閥のように大学名を唱えればすべての扉が開かれる(コネ社会の始まり)。人格・能力・社会適応力などはほとんど関係ない点数序列主義教育が市場的競争原理主義のルールの下に置かれた未来を暗示している。対症療法として、最低賃金はどんどん上げて所得の高い人の方は抑えてもよいのではないか。政治の喫緊の介入が必要だ。
後半は煽りすぎのような
前半で紹介された事例はなかなか興味深かったが、後半はさてどうだろう。
評者はざっと思い浮かべただけで父親が東大卒+東大院修了、現在子育て真っ最中の家庭を三つ知っているが、このように目を三角にして塾だ受験だと全知全能を傾けている家は無い。
(一応は偏差値70以上の高校に通っていた)評者の見聞の範囲で言えば、少なくとも第二次ベビーブーマー以前で東大に入れたような人間の多くは、最初からモノが違うことが多かった。こと受験学力に関して言うならば、東大生の半分は他人と同じ量の努力で他人の3倍進歩するような規格外の生物である。著者が後半で煽っているような狂気の受験努力をあざ笑うかのように、彼らは6割の力で楽々と先行馬を追走し、最後の2年間で軽々と先行馬を交わしてゆく。あるいはこう言っても良いだろう。ちょこまかと必死で逃げる小排気量車を、直線のアクセル一踏みでゴボウ抜きする。本物の東大生とはそういうものだ。氏は育ちを凌駕する。
そうではないギリギリのもう半分になりたければ著者の言うような努力をするのも一つの選択肢であるが、内田樹が『下流志向』で紹介していたエピソードを信じるならば、そういったギリギリ東大生は受験勉強で知る以外の一切の教養や知識を持っていない、一昔前の東大にはいなかった奇妙な学生なのだという。すなわち文化資本の点で決定的に劣る東大生である。我が子をそのような無教養な人間に育ててしまうこともなかなか問題含みだと思うがどうか。
豊富な実例に基づいた良書
今流行の格差社会の教育版。やはり教育も二極化しているとのことで、著者はその両者に実例を用いて解説してくれている。
荒川区の例で、実例を用いながらも、極論に走りがちな点はしっかりとセーブする等、主張するところははっきりするが、煽らず客観的に解説する姿勢には好感が持てる。
また個人的には、親の何気ない姿勢が子の階層の固定をする、という意見は非常に参考になった。
教育崩壊が話題になっている今だからこそ読みたい本。
